2017上州武尊山スカイビュートレイル70Kレースレポート~総合4位入賞~

 
2017年一番の勝負レースと位置付けていた今回の上州武尊スカイビューウルトラトレイル70。距離75km、累積4500D+と、ミドルレンジでは国内屈指のハードコースだ。今までの最長レースが2年前のスパトレイルの72kmで、自分にとっては過去最長距離。
 

上州武尊山スカイビュートレイル70Kに向けたトレーニングとピーキング

 
練習として本格的に武尊に向けて取り組めたのは8月末から。それまではなかなか山に行く時間が取れず、ロードでの練習がメイン。普段の練習内容としてはマフェトンペースで60~90分程度のジョグ週2~3、週1回岩本町TRCでのインターバルが主な練習。
 
 
ピーキングのことを考えるとハードな練習出来るのは3週間前まで。残された期間は5週間。
つまりがっつりトレーニングできるのは2週だけ。

そこで土日は2週連続でBack To Backを実施。

メニューは以下。
 
8月4W
sat:天狗トレイル 35km 2400D+
sun:雲取山トレイル 23km 1600D+
 
9月1W
sat:富士山レペ +宝永山トレイル 28km 2500D+
sun:鎌倉トレイル 25km 920D+
 
 
とりあえず山不足を解消するため、トレイルで出来る限り累積を稼ぐ。
最後の追い込みは富士山に行きレペで追い込んだ後に、宝永山までトレイル。翌日は重くなった身体でスピードを出して走り続ける練習がしたいため、低山の鎌倉へ。
 
あとは徐々に練習量を落としていく。練習頻度、質は大きく落とさず距離・時間のみ減らしていく。
目安としては以下。
 
3週間前:80%
2週間前:60%
1週間前:40%
 
最終週は練習量がかなり減るので、体重が増えすぎないように食事に気をつける。あとはいつもより早く、長く寝ることを意識。
また、3週間前からアルコール・カフェイン抜きを実施。
 
10日ほど前は疲労が抜けて行っているのかでダルさがあったが、それが抜けてからは身体の状態はかなりいい感じにもっていくことができた。
 

レース計画と補給について

 
目標はトップ10&年代別入賞。あわよくば総合6位以内入賞。
 
そのためにもタイムテーブルは2つ作成
BestがプランAでGoodがプランB
 
 
二つのプランを用意しておくことで調子が良くても悪くても、途中で心折れることなく走りきれる。
 
 
 
作戦としては前半は無理せず、後半50km以降の比較的走れる箇所で落ちてくる人をしっかり拾ってく、後半型の作戦。
 
 
ペースの管理は心拍を利用。
50kmまでは登りは165、平地と下りは155を目安に。そこから先はイケるとこまでいってとにかく出し切る。
 
 
補給は基本ジェルのみ。
補給ペースは登り中心の区間は30分に1つ、平地と下りは40分に一つ。そして下りの前にはなるべく補給しない。
用意したジェルは20個。内訳はマグオン12個、アスリチューン7個、WASP1個。
 
 
 
飽きがこないように味を変えるのに加えて、食感が違うものを用意。マグオンはサラッとしていて飲みやすいけど、ジェル感が強く後半まで飲み続けられるか心配だったので、ゼリー状のアスリーチューンを持参。WASPは水に溶かす用。
 
ジェルだけだと空腹感を感じることがあるので、山より団子とスポーツようかんを持参。
 
また、10時間以上走るのもジェルを20個摂り続けるのも初めてだったため、胃のケアとしてMAGMAを多めに。90分に1つのペースで摂る計算で7つ用意。胃腸のトラブル予防にMAGMAは本当に心強い味方。
 
 

レース展開~予定通りの前半戦~

 
スタートからいきなりスキー場の登り。
トップ5人くらいはけっこう早いペースで進んでいく。ここは無理してついて行かず、10位くらいからスタート。
 
登りは走らずにパワーウォークで。それでも心拍は165くらい。
 
つなぎのロードで2人抜かし、そこから下りが終わって武尊山の登山口で4人の集団に。そこから本格的な登りに入るまで3kmほどあり、そこで2人が集団から離れる。平坦の区間で、心拍が160超えていたので登りでは省エネに切り替え無理ないペースで武尊山まで歩く。
 
 
武尊山からの下りはかなりガレている。ここは足にも胃にもダメージを残さないように。とにかく丁寧に下る。
 
ガレた下りが終わり、なだらかな林道の下りに入ったところで一人抜かす。ここの林道が前日の雨の影響で泥沼と化しており、くるぶしまで泥に浸かるのは当たり前。一度膝上まで浸かってしまう。
 
下りが終わった第1エイドの武尊牧場では6位。プランBから3分遅れ。
 
このエイドで武尊山の登りで離された人に追いついた。
 
エイドワークはとにかく短くとレース前から決めていた。
そのためにエイドですることは事前にシュミレーション済み。ゴミを捨てて、MAGMAを摂取し、水を補給。事前に決めたことをスムーズに行い前の人より先に1分ほどでエイドを出る。
 
 
この時点で5位。予定したペースから3分遅れているが、想定より順位はいいし、脚にも余裕はある。ここからはとにかく落ち着いて。
 
エイドを出た後はしばらく下って岩鞍のスキー場へ。この登りがかなりエグい。斜度20度以上あるんじゃないかという急登を約1kmひたすた上る。パワーウォークをしながらもふくらはぎやハム、お尻と負荷がかかるポイントを変えながらひたすら登る。
 
登った後はもちろん下るのだが、下りの斜度も半端じゃない。どう下っても膝周りが痛い。普段なら下りは好きなのが、この下りは辛かった。とにかく足と胃にダメージをかけないように蛇行しながら下る。
 
長いくだりを終えると、次は片品スキー場のゲキ登り、下りを繰り返し第2エイドの片品高原に。プランBからは2分遅れ。この時点で前にいる4位の人と大体20分差と告げられる。
 
残りは45km、事前のプランから大きな遅れはないし、30分以内は射程圏内だと思っていたので、心は折れない。まだ無理はせず設定した心拍でひたすら進む。
 

勝負の後半戦へ

 
しかしここからの農道と林道が思うように走れない。本来、走れる登りは得意なはずなのに。ジェルも予定通り取れてるしエネルギーは足りてる。でも思うように走れない。急なスキー場の下りで脚にダメージを受けているからか。単純に飛ばしすぎなのか?身体と気持ちにギャップが生まれ、これ以上前と離れるわけにはいかないという焦りも出る。
 
登りの斜度もきつくなってきたので少し歩きも混ぜながらとりあえず落ち着こうと一歩一歩足を進めていくと大きな登りが現れる。走れるような登りじゃなかったので、「前も歩いてる。このペースで進めば大きく離れることはない。後半走れば必ず追いつく」と言い聞かせ、身体と気持ちを一致させていく。
 
しばらく歩き続けることでだいぶ脚も復活し、心身ともに復調の兆しを感じながら第3エイドで。
 
ここで思いもよらないことに今まで遅れていたプランBの設定タイムを約10分上回る。
 
思うようにいかない区間だったのにタイムが縮まってるということは、みんなここは苦しかったはずだし、このペースで予定タイムを上回れるなら、ここから設定タイム以上で走るのはそう難しくない。そう思うとかなり元気になった。
 
また、この時点で前のエイドで40分差があった前のランナーとの差も10分と聞き俄然元気が出た。
 
(リザルトを見てみると一つ前のWSから第3エイドまでのセッションタイムが全ランナーで1位だった。単純に飛ばしすぎだったか。)
 
ここからしばらく下りが続くが勝負は最終エイドからなので無理はせず、とにかく胃にダメージをかけないように丁寧に走る。
 
多少足が終わっても、痛みがあっても下りであれば走れることは以前の経験からわかっていた。しかし胃が痛くなっては下れないし、歩くことも難しくなる。だからとにかく丁寧に下る。
 
50km手前のロードの下りが終わる直前で4位のランナーの姿が見えた。ここは並走せず、一気に抜きたいところ。
 
しかし、ここから登りの林道に入る。登りを猛プッシュする力は残ってなかった。それでも、平坦でのペースは確実に上回っていたので、無理はしないながらも並走することなく追い越す。追い越してからすぐ登りに入るがここは多少でも無理をして姿を見せないように後続を離す。しばらく離れたところで心拍を戻し歩きと走りを組み合わせながら進む。
 
後続の存在は熊鈴から感じるものの多少の距離を開けたまま最終エイドへ。ここでもゴミを捨て、水を入れ替え、MAGMAを飲むという、このレースのルーティンを行い1分ちょっとでエイドを出る。
 
エイドを出た直後に後続のランナーがエイドに到着したのを確認。(ゴール後に話を聞くと姿は見えていなかったとのこと。)
 
(リザルト見ると第4エイドからこの最終エイドまでの区間タイムも全体1位。)
 
この時点で3位のランナーとは約20分差。厳しいが諦めるには早い。守りの姿勢に入らないように気持ちを作る。足の状態を考えると大きなトラブルさえなければ後続には抜かれない。
 
そう考えると気をつけることは2つ。
 
1つは胃へのダメージ
2つ目は補給。
 
胃が痛くならず、ハンガーノックにもならなければ追いつかれることはない。先頭集団に何かトラブルがあれば、走り続けていれば追いつけるかもしれない。
 
そう思いながら林道の下りを気持ち良く走る。57kmあたりからの登りがとにかくキツかった。ロープを頼りにとにかく一歩一歩進む。
 
このキツイ登りを終えたあたりからゴールを考えることが多くなってきた。総合入賞でゴールできることを考えると泣きそうに。
 
ここからは大きな登りはなく、細かなアップダウンが続く。ここからは練習の成果の見せ所。登りは遅くてもとにかく走り続ける練習は今年に入ってから峠走、トレイルでひたすたやってきた。
 
今まで登ってきた山々を思い返せば、こんな登りは大したことはない。そう思いながらひたすた歩かないで細かなステップで走り続ける。
 
登りが終わると、今までやってきたことが報われたような感じがして、またもやうるっとしてしまう。
 
あとは約7km下るだけだ。
最後まで集中力を切らさないように、一歩一歩進む。最後の林道は霧と相まってなんとも幻想的な雰囲気でとても気持ち良かった。
 
ロードに出るとラスト1kmの標識が。総合4位入賞を確信した。もう嬉しくて仕方なかった。勝手にウイニングロードと思い込んで感傷に浸り、今までやってきたことを噛みしめながらゴールまで走った。最高の瞬間だった。
 
 
 
 
普段であればどんなに辛くてもゴールすればまた走りたくなってしまうのだが、武尊はしばらくいいかなと思ってしまうくらいに厳しいレースだった。このコースを129kmやり抜く人たちは本当にすごい。すぐに出るとは言えないけど、いつかは129kmにも挑戦しようと思う。
 
 
 

このレースの収穫と課題

 

収穫としては3点

1.ピーキング含めレースマネジメントが上手くいった

2.最後まで足が終わらずに走りきれた

3.胃にダメージなくジェルのみで10時間いけた

 

課題としては2点

1.大きな登りが遅い

2.下りのダメージに耐えきれない

 
大きな登りは以前よりマシになったものの、やはりトップ選手と比べるとかなり遅れをとってしまう。ここの課題へのアプローチが明確でないことも問題。(どなたアドバイス頂けたら幸いです。)
 
また今回下りで膝回りにかなりダメージがあり、直後の林道での失速に繋がった。今まで怪我を恐れて避けてきた、峠走の下りで大腿四頭筋強化が必要そう。