【レースレポート】CULTRA2019 CAMERON ULTRA-TRAIL100km in Malaysia  

エントリーにあたって

もともとこのレースの存在は去年から知っていて去年エントリーするつもりだったが、エントリー開始後2日で締め切られてしまい、エントリー出来ず今年初めてエントリーし、無事に抽選に当たり出場が決定した。
 
マレーシアでは最も人気のレースで抽選となるのはこのレースだけだと言う。
 
このレースを選んだ理由だが、自分は9月に勝負レースの信越五岳110kmがあるので、その前に100kmほどのレースに出たかった。また嫁も50kmのレースを4度完走し、次のチャレンジとして80〜100kmレースを探しており、二人の都合があったことで出場を決めた。
 
そして各SNSの投稿が非常に盛んで、写真や動画もかっこいいし、全て英語での説明というのもこのレースを選んだ決め手の1つだ。
 
大会公式サイトはこちら

旅の日程

レースは土曜日の朝3時45分スタートで前日受付。クアラルンプールからバスで3時間ほどなので、遅くとも金曜日にはマレーシアに着いている必要がある。
 
自分たちは水曜日の深夜発で木曜の早朝マレーシアに到着。クアラルンプールで一泊して、金曜に会場入り。
 
レース後は日曜の14時にバスが現地発で18時頃クアラルンプール到着。それから日、月はクアラルンプールでゆっくりして火曜に帰国でトータル5泊7日の日程。
 
最短であれば、金曜入りして、日曜の夜帰り月曜日の朝着という弾丸スケジュールも可能。
 

レース戦略

今回自分のレースの位置づけはBレース。ピーキングをするわけではないができる限りの結果は求めるレース。
 
去年のリザルトを見て、ざっくり目標は14時間切り3位入賞。
 
コースはピストン。前半は下りが多く、後半は登り多めなので、前半は無理せず、後半勝負。
 
 

レース前半

スタートは朝3時45分。
まだ真っ暗で半袖で少し肌寒いくらい。マレーシアの首都クアラルンプールは日中は30度を超える暑さだが、ここはスタート地点で標高が1500mほどありかなり涼しい。
 
 
スタート10分前くらいから大粒の雨がポツポツと降り始め、スタートとほぼ同時に本降りに。
 
 
少し並ぶのが遅れ6列目くらいからのスタート。
トレイルまで約1kmのロードは周りの様子を見ながらキロ5を切るくらいで余裕を持って走る。この時点でだいたい15位くらい。トップ2〜3人はすでに見えないがまだ序盤なので順位は気にせず進む。
 
 
いきなり急な斜度の登り。心拍を見ながら決して無理をせずに進むがそれでも1つ目のピークを終える頃には結構な人数を抜いて再びロードへ。
 
ここで日本人選手に声をかけてもらう。
前日に会見を受けていた喜多村さんだ。
 
この会見をFB上で見ており、過去のリザルトもチェックしていたのですぐに分かった。喜多村さんはマレーシア在住でアジアトレイルマスターのレースを中心にアジア近郊のレースで活躍されていて、現在シリーズ2位の強者だ。
 

前日のインタビューと喜多村さんの戦績

 
話を聞くと、今は6位で前ふたりはかなり離れているとのこと。また、エントリーリストに名前はあったが去年の優勝者でマレーシア最速のランナーはDNSということも教えてもらった。
 
アジア近郊レースの話やマレーシア、日本のトレイル事情の話をしながらしばらく並走する。かなり余裕を持って走っているのが伝わってくる。
 
4kmほど一緒に走り再びトレイルに戻る際に自分はトイレに寄ったため、ここで離れる。本格的なトレイルでかなり木が生い茂って前は見づらく、地面には根も複雑に張っているのに加えて雨の影響でドロドロになっており、なかなかリズムよく走れない。
 
そして、ここでロストをしてしまう。マーキングはかなりちゃんとしてるし、時計にはgpxのデータも入れてあったはずなのに、ある部分で逆周りのコースに入ってしまったようで後続の選手と鉢合わせロストを知る。大した距離ではないが、トイレにより出来た差も含め、前の選手が見えないので多少の焦りが。
 
焦りはあるが、ここで無理しても意味がないと自分に言い聞かせ、決して無理はしない範囲で歩を早める。
 
3kmほど走り、CP2のエイド前を過ぎたところで一人選手を交わし、喜多村さんには前半のピークの前で追いついた。ここでもしばらく並走するが、下りが段差が大きく、自分はなかなか上手く下れないのに対して、喜多村さんはリズムよく下っていき、登りで追いつくという展開。恐らく最後まで競り合うと思っていたので、どこが強いかを把握できてよかった。
 
前半で一番のピークへの登りで先に行かせてもらう。登ったら一気に700m下りる。ピストンコースなのでこれを登り返すことを考えると少し憂鬱に。。
 
ちょうど下りきったところで彼に追いつかれる。やはり下りは彼に分がある。そこから次のエイドまで4kmほどロードの登りを並走するが終始話をしながらでかなり余裕がある様子。自分もこうした登りは得意なほうだが、彼も得意そう。(レース後に話を聞くとはやはり走れるところは好きとのこと)
 

そのまま二人でドロップバックがあるCP4へ。

ここから再びCP4に戻ってくるまでは約50km。その分のジェルを大量に持ち、先にエイドを出る。

 

レース中盤は走れる茶畑

 
ここから先はここまでのジャングルトレイルとはうって変わってずっと林道。茶畑のなか、1kmで50mUPするような緩やかな斜度の上りと下りを繰り返す。
 
 
でも、自分はこういう単調なコースは嫌いじゃない。一定のリズムで走り続けていると前の選手が3人見えてくる。一人ずつ追い抜かし、約35kmくらいでトップに。この展開は完全に予想外だが、決して無理はしてないので相手に合わすことなく自分のペースで走り続ける。
 
陽も出てきて、直射日光があたり暑くなってきた。時折水も首にかけながらジェルと電解質の補給を怠らないようにする。この走れる林道50kmである程度勝負決まる気がしていたので、後続は見えないが決してサボらず走り続ける。

そのままトップで50kmの折り返し地点へ。

見えている小屋?で折り返しバンドをもらう

ここで後続とすれ違う。ここまではほぼ走っていたので理想で言えば2km、15分位の差が欲しいと思っていた。
 
しかし思ったより早くに喜多村さんとすれ違う。その差は約1.5kmで時間にして10分ないくらい。まだまだ元気そうだし、安全圏ではない。3位の選手も自分が抜いたときから変わっており、20分差くらいにいる。
 
ここから先は自分は後ろとの差は分からない。しかし後続の選手はエイド通過のたびに差を聞ける。となると自分がやることは各セクションで差を縮めさせないこと。姿が見えなくても差が縮まってることが分かれば少なからず元気になってしまうはず。
 
ただ、実際の走りは変わらずとにかく淡々と走り続けるだけ。後ろからの人は見えないが、前から100km、55kmのコースを走っている人とすれ違い、たくさん声をかけてもらうし、エイドに入るたびに多くのスタッフが「100kmのトップきた!!」と盛り上げてくれるので、身体は少しづつしんどくなってくるが気持ちよく走れる。
 

見えない相手から逃げ続けるラスト20km

 

 
ここまで林道セクション約50km終えて80km地点CP4に再び戻ってくるころにはかなり足にダメージが来てた。路面は砂利などの硬い路面がほとんどでそこを登りも下りも走ってきたので無理もない。
 
 
しかし長い勝負ポイントは終えた。あとは20kmのトレイルセクション。
 
ロードの下りを終え、エイドを挟んでこのコース最大の登りの700m UPへ向かう。かなり急な斜度なのに加えて、トレイルは行き以上にドロドロで歩かざるを得ない。全身を使ってよじ登るような場所も。
 
もちろんキツいが今まで走り続けていたので精神的には少し楽。なんとかピークを終え、90km地点のエイドへ。ここを出るときにエイドスタッフから思いもよらぬ情報が。(ちなみに自分から聞いてないw)
 
「後続との差が6分!」と。
 
 
そんなバカな。。
ここまでほぼ走り通し、エイドの滞在もなし。それでこの差を縮められてたら かなりヤバい状況。
 
脳内が一気に騒がしくなる。負けるイメージまで浮かんで来てしまう。しかし、冷静に考えてあと10kmで6分差。縮められてると言ってもまだ俺のほうが有利だ。とにかく姿を見せないようにできる限りプッシュする。
 
ここで見えない相手から逃げ続けるトップのしんどさを身を持って、体感した。
 
大した登りじゃないはずなのに異様にキツく感じる。精一杯登っているつもりだが心拍は上がらない。
 
そして無事登りを終え、最終エイドに向かう前になんと2度もロスト。。
時計でルート確認していると、少し外れているのに時計がズレてるだけだろうと希望的観測で先に進み、ルートとのズレが大きくなったところでロストしたとはっきり認識し、戻る。
 
冷静さを失っている。。
 
それでもなんとか最終エイドにたどり着く。ラストのトレイル直前のロードの登りがめちゃめちゃ辛い。でもラスト5kmで抜かされて優勝逃すことを考えたらどんなに辛くても走るしかない。
 
ラストのトレイルがどことなくいつも走ってる南高尾のトレイルに似てる感じがして、不思議と身体がよく動く。
 
最後のピークを終え、ラスト1kmのロードでスタッフに1位であることを確認し、優勝を確信。
 
ラストはバイクが先導してくれて、通ってる車もクラクションで祝福してくれる。
 
ゴールゲートの前にはたくさんの人と声援でこれ以上ないくらい盛り上げてくれる。間違いなく今までで最高のゴールだった。
 

 
結果は12時間52分。
 
 
 
ちなみにCP2のエイドで聞いた後続と6分差は誤情報でゴールで40分の差に。
 
でもそのおかげで最後の最後まで追い込めて、いいタイムが出せたと思うことにしようw
今回のタイム、マレーシア最速でITRAスコア770越えの人が持ってるコースレコードまであと5分だったらしい。しかも、今年は雨でコンディションが悪かったらしいので、その中でこのタイムはかなり自信になりました。
 
レース後は会場だけでなく、街でも声かけてもらい最高の気分でした。
 

 
 

大会に関して

今まで日本はもちろん、海外レースも複数参加してきたが一番と言ってもいいくらい、いいレースだった。優勝したことで色眼鏡はかかっているだろうが、それ抜きにしてもまた来たいと思えるレースだった。
 

まず前日の受付は非常にスムーズで体制も整ってるし、参加賞のクオリティも高い。

参加Tシャツだけでなく、フィニシャーTシャツとタオルも。これで参加費11,500円は安すぎる。

 
事前の案内も当日のアナウンスも英語なのも嬉しい。エントリーはじめ、参加にあたり困ることはほとんどなかった。
 
レース運営もマーキングはライト付きでちゃんとあるし、gpxデータも共有されている。エイドも充実してるし、大会スタッフも多く、しかも皆とても楽しそうにしている。また一緒に走ってる人もいい人で、ゴミもほとんど落ちてない。
 
コースは絶景こそないが、全く異なる2つのセクションを楽しめる。初めての海外レースや初の100kmレースにもオススメだ。ITRAのポイントもつくし、100kmはウエスタンステイツエントリーの対象にもなっている。ただ、マレーシアでは唯一抽選となる人気レースなので、出れるかは抽選次第だ。
 
一緒に出ていた嫁はこれが初めての100kmレースだったが楽しく完走していた。しかもカテゴリ9位のオマケ付き。
 
このレースは39歳以下とそれ以上でカテゴリが別れており、各カテゴリ10人が入賞対象なのも入賞狙う人にとっては嬉しいポイントだと思う。
 

盛大な表彰式。

 
SNSもすごい活発で公式アカウント見ると、レースの雰囲気が伝わると思う。ゴールや表彰式もすごいし、メディアもたくさんいて、かなりの盛り上がり。
 
来年は今年のコースとは変わって、累積がもう少し多くなるコースを考えているそう。
ありがたいことに招待してもらえるとのことなので来年も参加したいと思う。